福祉教育の感想から見えてきた課題・・・
本会では、学校や地域、企業等の皆様からの依頼を受け、福祉を自分事として考えていただくために「福祉教育(啓発)」に取り組んでいます。
これまでも福祉教育のプログラムで当事者による講話は一般的でしたが、参加者からの感想は「かわいそう」、「障害がなくて良かった」なども多く、社協が本来目指している福祉教育の目標を達成できていない実態がありました。
地域の一員として活躍する障害当事者を増やしたい
そこで、本会は本来の目的である「福祉を自分事として考えていただく(誰もが暮らしやすい社会について考えられる)福祉教育」を実践するため、障害当事者自身が『社会モデル』(※1)の視点で障害について伝えること、市民に対して『ノーマライゼーション』(※2)の理念の普及を図るとともに、障害当事者の社会参加の機会とすることを目的として、令和4年度から「障害当事者講師養成講座」を実施しています。
障害当事者講師が各地域の福祉教育で活躍することで、地域共生社会の理念である「誰もが生きがいや役割を持って活躍できる社会」を創っていくと同時に、地域には様々な方が暮らしていることを知り、障害の有無に限らず、相手を想う気持ちが広がっていけばと考えています。
(※1)社会モデル・・・「障害者を取り巻く社会の側に物理的・心理的な壁があることにより、日常生活や社会生活を送ることに支障がある」と捉える視点・考え方
(※2)ノーマライゼーション・・・障がいのある人もない人も、互いに支え合い、地域で活き活きと明るく豊かに暮らしていける社会を目指すという視点・考え方
講義を通して障害当事者自身が「社会モデル」について学び、講座の最後には、実際の依頼に見立てて受講生が講義をする模擬演習を行いました。
模擬演習では、先輩講師等からアドバイスをもらうことで、よりよい講話内容を作成していくだけでなく、自身が当事者講師として「障害」や「共生社会」について説明するイメージをつけました。
現在、養成講座を修了した受講生のうち、20名が障害当事者講師として登録をしています。
より多くの活躍の場を
教育現場などでは、福祉教育の実施において講師を呼ぶための予算がないことも多いです。
そのため、令和5年度からは講師派遣の助成制度も設け、当事者講師に依頼がしやすい環境を整えました。
これまで 延べ10名(令和5年:5名、令和6年:5名)の当事者講師を学校及び地域の福祉教育の講師として派遣しています。(令和6年11月時点)
また、今後延べ6名の当事者講師が大学や専門学校にて福祉教育を行う予定です。
今後は、当事者講師として登録いただいている方により多くの活躍の場を提供できるよう、派遣事業に力を入れていきたいと考えています。
実際の福祉教育の場での当事者講師の活躍を紹介します
横浜市内の小学校での福祉教育の講師として当事者講師を派遣しました。
当日の様子をご紹介します。
今回は身体障害(肢体・言語障害)のある方、視覚・聴覚の重複障害のある方の2名が当事者講師として福祉教育を行いました。
お二人とも、音声や映像を使ったり、クイズ形式を取り入れ、子ども達に自身に答えてもらったり、考えてもらう場面も多く、双方向のやり取りをとても上手に行っていました。
また、お二人からの講話を聞いたあとは、「講師のお二人が小学生としてクラスの一員だった場合、一緒にドッチボールをするためにはどうしたらいい?」というテーマでグループワークも行いました。
子ども達からは「ボールを工夫する(光や音、色など)」や「当てる人の名前を呼びながらボールを投げる」などのアイデアが出て、ちょっとした配慮や工夫でみんなが一緒に楽しむことができる(共生できる)ことに気付いてもらえたと実感しました。
今後に向けて
横浜市社協では、「お互いさま」の地域社会の実現に向けて、高齢者や障害者など当事者の方々の力も借りながら、学校や地域における福祉教育を推進しています。
今後も、障害当事者自身が、自らの体験をもとに障害当事者としての想いや障害への理解・ 合理的配慮について伝える場を増やしていくことで、皆様と一緒に誰もが住みやすい地域づくりについて考えていきたいと思います。